私は昨年7月に、「大規模合唱団の一員として、オーケストラと一緒に歌う」という、
死ぬまでにやりたい事の一つを叶えました。
川崎市市政100周年記念式典の、特別演奏に参加したのです。
その経験は、正に一生の一度の機会でした。
先日亡くなった、指揮者の秋山和慶さんの指揮で歌う、ただ一度の機会に…
私にとって奇跡のような経験になりました。
(川崎市合唱連盟より)
秋山和慶さんは本番のみならず、ミューザ川崎で行われた直前リハーサル二日間も全てにおいて指揮、指導をなさり、
熱心に音楽づくりをなさいました。
プロ、アマチュアの垣根は全く無く、
本当に真面目に、真摯に、真剣に、そして同時に楽しく温かく、
出演者全員と一緒に力を合わせて良い音楽を奏でる、
そうした信念を感じました。
その姿には単なる「仕事」というよりも「奉仕」の心が映し出されていました。
音楽のために人生を捧げる姿勢。
大事なのは自分の見栄などではない。「音楽」が大事なのだと。
(川崎市より)
人間とは不思議なもので、
たった三日間、数時間同じ空間に居ただけなのに…
秋山和慶先生には多大な影響を受けた気がします。
そして訃報を知った時は…心の底から悲しかった、言葉が出なかった。
出演者の末端に居た私ですらこんなに悲しのに、
近しい方々の悲しみはいかばかりかと思います。
また、私は一聴衆としても、秋山さんには忘れられない思い出を作っていただきました。
2021年8月、新百合ヶ丘で聴いたシューベルトとチャイコフスキー、
秋山さんの指揮でした。
コロナ禍のさなか、生の音楽を聴く事に飢えていた私はこの演奏にどれほど救われたか。
どこまでも誠実な温かい演奏でした。心が満たされたあの時の気持ちは忘れられません。
派手なことは一切なさらず、音楽に溶け込むような指揮…
音楽に奉仕し、そして音楽に愛された人生だったのかと思います。
日本にこのような偉大な指揮者がいらした事を忘れません。
ご冥福をお祈りいたします。